新しく買った、というわけではありません。
この家に二年半前引っ越して来たときから既にそれは備え付けられていたのですが、
つるんとしたクリーム色のボディにはボタンらしきものは見当たらず、
リモコン操作のみのようだったのに、リモコンは前入居者に捨てられたのか、無く、
でもまあ、いいや。
そもそもクーラーってつけると体が冷えるし、温暖化助長するし、といってあるとつけちゃうし、
よかったよかった。と、早々に諦めてしまったのです。
ところが先日。
熊本県天草は御所浦から、我らが
森枝ふさ子母さんが
民宿の休みを死守して人生初の東京上京を果たし
我が家に訪れた時のこと。
暑くてごめんね、うちクーラーがあるくせにつかなくてね・・・
とぼやいていたところ。
森枝電気の嫁・ふさこ、ひょいと椅子に乗ってクーラーの蓋を開けると
「あ、やっぱりあった」
と黒い小さなボタンを見つけて、ぽちっと、押しました。
おいおいおいおいおい!
冷風が流れて来たじゃないかあ!
なんだったんだこの二年。
・・・以降、今年の恐ろしいまでの熱射に耐えかねて
「贅沢品」との認識から離れられずにはいるものの、時折クーラーに頼るようになりました。
しかし子どもの頃からクーラーには否定的な家庭で育った私。
ちょっとやそっとじゃつけません。
そのせいでまんまと熱中症になったんだろうか。
日中体内に溜った熱に襲われて夜中じたばたと転がりながらうなされて苦しかったので
もう今日は観念して、朝も早よから贅沢にクーラーをつけて作業をすることにしました。
我が家は借家ですが、二階建てです。
このクーラーの導入によって、一階と二階では格差が生まれました。
基本的に、二階は<文字と紙の部屋>。
作業用の机と椅子があるので
通常、本を読んだり物を書いたり、集中力を必要とする場面で使用されます。
一方一階は<音と食とコンピューターの部屋>。
アンプと、キーボードなどがあり、インターネットの回線もここにしかないので
私はほとんどこちらにいます。
さて。
今日の主役、クーラーはどこにあるかっていうと一階なわけです。
クーラーがあったってなくたって、一階と二階どっちの方が暑いかといえば
上の方が屋根も近いし(屋根は薄いし)そもそも熱気は上に昇るしで
二階の方が絶対に暑い。
さらにクーラーがつくことが判明した今となっては、絶対に一階の方が心地よい
・・・かというと、単純にそうでもない。
人間の体はよくできています。
頑張れば、二階の暑さはかえって集中力に繋がりもする。
そもそもつい一ヶ月前までの二年間はそのように過ごしてきたのです。
だからあえて二階での滞在を選んだりもします。
「そうだよ!だって私には団扇ってものがあるじゃあないか!」
と、団扇とコップに入れた氷水を片手に強がりを言いながら、二階で作業をしてみる。
団扇は去年ひかりちゃんから誕生日プレゼントにもらったもので、熊本の○○というお店の、質素だけれどとても品が良く、扇いでいると熱風も豊かな風になるので、重宝しております。
しかも窓を開ければ、風も流れます。扇風機だって装備されている。
窓から見える大家さん宅のお庭の緑は目にもよく、鳥達もぴーちくさえずっております。
まあ。わたしったら素敵なおうちに住んでいること・・・。
そうしてしばらくすると体は熱風に慣れて来て、その温度が心地よくすらなってくる。
ところが、やっぱり厳しい。具合が悪くなって来て、一階に移動。
クーラーをぽちっとつける。
次第に訪れる清涼感。
あああ・・・心地よい。作業が進む。
と 途中で忘れ物に気付き再び二階へ上がる。
さっきまでいたはずのそこは息苦しいほどの熱気で頭がぼうっとなってしまい、
取るもの取ってすぐさま階段を駆け下りる。と、
今度は天国どころかぎょっとするほどの冷却空間。
「ひえー!こんな贅沢な場所にいたのかいあたしは!」と、自分を責めながら座布団に座るのに
コンピューターをしばらくいじっているとまた体が冷気に馴染んでしまい
いかん、いかん。温暖化助長じゃ。電気の節約じゃ。
と意を決して電源を止めるとだんだん具合が悪くなり
・・・葛藤の元にクーラー生活が始まってしまいました。
いいんだろうか。
でも身の危険を感じる2010年の猛暑です。