という、サイトを見つけました。
「とくに活動はありません。バナーを貼ってこっそりと(いしいしんじさんの小説がすきだということを)主張してください」
とだけ書いてある、いたってシンプルなサイトなのですが
バナー、ちっちゃい...
いしいしんじさんの小説との出会いは、映画『もんしぇん』の共同執筆者・海津研君
にもらった『プラネタリウムのふたご』という本でした。
そのころはうまく活字が読めない時期で(何故かそういう時期があります)
漠然とその気配を掴むのが精一杯だったのですが
工場を抱えている町の煙った空気と小さなドームに投影される星の光景は
胸の奥に残りました。
それから三、四年経っていたでしょうか。
昨年Psalmの全国ツアーで北海道を訪れたとき、夕張のずりやま(石炭のくずで出来た山)に登って、立ち並ぶ赤と青の屋根の家々と側を流れる川を見ていたら
ふと『プラネタリウムのふたご』のことを思い出し、
夕張の町でなら、あの作品を映画化したり出来るのかもなあ・・・
そしたらどんな映画になるのかなあ・・・などと思いつつ
旅を続けていました。
東京に帰ってきたある日
本屋でふと『ぶらんこのり』(新潮社)という、いしいさんが作家として歩き始めた初期に書いた小さな物語りを見つけ、夕張のことを思い出し
他のものも読んでみようかな、と手に取ったのが二度目のきっかけで
それ以降は、『麦ふみクーツエ』『ポーの話』『絵描きの上田さん』と
少しずつですが 一冊でも多くのいしい作品を読んでみたいと
本屋さん図書館に足を運んでいるところです。
私は非常に読むのが遅く、また、気に入ると何度も読んでしまうので
なかなか次に進めません。
世界にはたくさんの良い本があり、私の知らないことがあり
と それはよく分かっているにも関わらず、なかなか進めないのは
良い書き手の作品に出会うと、
例えば電車の中でそれを読んでいると
一文読むごとに自分の前に座っている人や、
飛んで行く窓の外の川なんかと絡み合って、
ぼう、っとしているうちに三十分くらい過ぎてしまうのです。
(・・・こんなことだから、世界名作全集すら読破出来ないのだ。)
いしいさんの物語りのいちばんすごいと思うところは
(と、今日はたまたま
いしいしんじ同盟を見つけたので、突然のいしいしんじ推薦文の日です)
言葉がかんたんなこと。
少ない絵の具で豊かな絵を描いているような印象を受けます。
登場人物の名称もかんたんで、「ぼく」「わたし」「おじいちゃん」「用務員さん」
など、ほとんど名前は出て来ず、呼び名だけで綴られていくのです。
土地や催し物の名前もそう。
にも関わらずとてもリアルに五感が使えてしまうところが、楽く、恐ろしい。
悪夢のような出来事も多く登場します。
私自身、物語や唄を書いてみるとホラーのようになってしまうことが多い人間なので
どんな小説であれ、映画であれ
ちゃんと恐ろしさを秘めているかどうかというのは、
ストーリーを信じる上で重要な要素です。
それから、もうひとつは
話者であるはずのいしいさんの姿が消えてしまい、まるでもう昔からこの物語りは
この世界にあったんじゃないか、と思ってしまうところです。
とくに『麦ふみクーツエ』は、冒頭からすごいスピードで巻き込まれて行き
冷静に考えれば、非常に構成もしっかりしていて作り物であることは間違いないのに
その構造は、まるで植物の規則性のように当然な顔をしていて
意図的な嫌らしさを感じません。
大きな大きな世界がどんと広がっていて
胸がひりひりするのだけれども、それを感じてもなお、ああ自分はちゃんと生まれて来れて、いろんな人たちとともにこの世界の住人として今生きていられてよかった、
と、黄金色に輝く太陽の強い日差しを浴びながら勇気が湧いてきて、いてもたってもいられなくなる、
そういう物語でした。
私は数多くの書物を読んでいるわけではないので比較からは語れませんが
私にとってはとても大切な物語でありました。
・・・Psalmライブ情報・・・・・
6/21(土)
東京日仏学院音楽祭
Fete de la musique 2008
12:00 festival start
入場無料/軽食・ドリンクは有料
場所 : 東京日仏学院
お問い合わせ
東京日仏学院(03-5206-2500)
7/29(火)
Psalm Live at 月見ル君想フ
(詳細決まり次第、掲載します)
8/20〜24
劇団アロッタファジャイナ公演
『ルドンの黙示』に、Psalm出演します
新国立劇場小ホールにて
(詳細決まり次第、掲載します)